エネルギー業界の片隅で

サラリーマン的定点観測とアウトプットの練習場

原油価格は中東情勢でサポート

原油ガス価格は対照的な動きで、温暖な天気予報による需要減を折り込み弱含みなガス価格に対して、中東情勢やサウジアラビアによる供給キャパシティ拡大停止等を折り込んで原油価格は先月末の水準まで戻ってきた。

 

 

 

先週触れた米国 LNG の新規輸出許可一時停止に関しても動きが見られた。米国下院小委員会及び上院エネルギー・天然資源委員会双方で公聴会が実施され、DOE の副長官から「現在輸出中のプロジェクト及び既に輸出許可を取得している新規プロジェクトには影響しない」との明言までなされた。そして、共和党がコントロールする米国下院議会はバイデン政権の決定を無効化する法案を通過させた。民主党がコントロールする上院を通過する可能性は低く、あくまでも議論を呼び起こすためのキッカケと捉えられる目的に留まる見込みである。脱ロシア産ガスを掲げる欧州から見た場合には米国が輸出許可を停止するのは極めてサプライズであり、ビジネス界隈からは急進的環境葉の票を取り込むための行為としてバイデン政権批判に繋がっている。ただし、これと足元のガス価格の低迷とは関係はない。

 

対照的に TotalEnergies 社長の Financial Times インタビューは現実路線を明確化した力強いメッセージ、経営者のリーダーシップを感じる内容だった。

化石燃料を必要とする人たちがいる以上、キャッシュフローを最大化させるためにも投資を行い、フロンティアとされるナミビアイラクでの石油ガスプロジェクトを推進する。過去 10 年のパフォーマンスは競合の国際メジャーの中でトップ。再生エネルギーポートフォリオの構築も完了。2028 年には黒字化する。

www.ft.com

Premium FT - Could Namibia be the next oil frontier?

 

中東情勢は安定しない。安定したように見えたのは Red Sea(紅海)の状況だけだったかもしれない。紅海の状況は米英が Houthi へ迎撃を開始してから、EUギリシャを本拠地に海軍派遣を決定したが、それほど大きなニュースはなかった。船舶運航会社はスエズ運河及び紅海を通らないルートでの運行を常態化させており、エジプトの歳入減に繋がっている。エジプトはガザからの難民流入も気にしなければいけない立場であり、巻き添えを食っているように見える。

 

 

パナマ運河も干ばつの影響で交通量が減っているため、代替ルートとしての喜望峰周りが増えており、追加コストの発生に余儀なくされている。あまり指摘されていないが、こうした状況では船舶からの GHG 排出量が増える。遠回りで航海日数が増えるため船はスピードをあげて進むインセンティブが発生する。その結果、ゆっくり運航、CO2減らす - 日本経済新聞 ことが出来なくなってしまう。

 

Patricia Schouker on X: "The closure of the Red Sea to traffic impacts 8.8  million bpd of #oil and 380 million tons of cargo daily. Global #maritime  routes now divert around Cape

 

イスラエル側がガザの Rafah に大規模攻撃を実施するとの発表もあり、混乱を招いている。米国のイスラエルへのグリップが効いていない印象で、ひいてはイランがプロキシを通じた中東内の力学を変更することに繋がるだろう。米国がイランのプロキシである、Hamasイスラエル)、Houthi (イエメン)、Hezbollah (レバノン)、シリア、等へどのようにエスカレーションするかについては要注意。

 

A short history of Gaza

Gaza's evacuees are racing south with nowhere safe to go